許容範囲
NRIJ交渉ワンポイントでは、Q&A形式で日頃の交渉に関するご質問や悩みにお答えしています。どうぞお気軽にご相談をお寄せください!
Question
営業マネージャーです。「最大10%までは値引しても良い」と部員に指示したところ、ほとんどの部員が「10%引き」で契約して来ました。
Answer
ビジネスの現場でよく起こる失敗の一つが「最大値」と「最小値」の取り違えです。
たとえば、あなたのように「最大10%まで値引きしてよい」とWalkAway(立ち去るライン)を提示したとします。本来それは“これ以上は下げてはいけない上限”のはずです。ところが部下たちは、その10%が“ここまでは譲ってよい基準”と受け取られ、ほとんどが、あっさり10%の値引きをしてしまいます。
これはまさに「人は易きに走る」という心理の典型例です。
許容範囲を設定すること自体は必要です。しかし、その数字がスタートラインになってしまう危険性を理解しておかなければなりません。
本来であれば、原価を守るために説明を尽くしたり、付加価値を提示したり、条件を組み替えたりと、さまざまな工夫があるはずです。それにもかかわらず、最初から立ち去るラインに飛びついてしまえば、自ら利益を削ることになります。
この課題を乗り越えるヒントが、段階的に条件を切り分けて交渉する「サラミスライス理論」です。
たとえば新規取引交渉で「契約期間は最長5年まで可能」と指示されても、いきなり「5年でOK」と提示する必要はありません。「3年契約ならいくらになりますか」と小さく刻みながら進めることで、最終的により有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
重要なのは、一気に限界へ進まない“ブレーキ”を持つこと。粘り強く、一段ずつ積み上げる姿勢が、結果として大きな差を生みます。
「易きに走る」と損をする。その教訓を、ぜひチーム全体で共有して欲しいと思います。