これで精一杯
NRIJ交渉ワンポイントでは、Q&A形式で日頃の交渉に関するご質問や悩みにお答えしています。どうぞお気軽にご相談をお寄せください!
Question
先日、お取引先から値引きの交渉時に「これで精一杯です」と答えたのに、さらに強く押されてしまい、止む無く了承しました。
Answer
交渉の現場でよくある場面として「これで精一杯です」と断言した後、相手からもうひと押しが来るケースがあります。ここで、つい譲歩して値引きに応じてしまいがちです。
実はこれ、交渉では、絶対に避けるべき最悪の一手と言えます。なぜなら「精一杯」と言った後に、さらに下げてしまうと、相手は必ず「やっぱり、まだ値引きできたじゃないか」と感じます。
一度こう思われてしまうと、あなたの「精一杯です」という言葉はその後、まったく信じてもらえなくなります。
この場合重要なのは、価格以外の「非価格条件」の提案です。たとえば「価格はこれ以上下げられませんが、納期は少しであれば前倒しできます」、「アフターサービスを一つ追加します」などです。こちらも譲歩しつつ、価格という軸だけは決して動かさない。この姿勢が、プロの交渉力です。
また交渉の場では、しばしば「ブラフ(はったり)」が登場します。「複数社に見積り依頼しています」といった“遠回しのスレット”は、脅しというよりは、当たり前の事前調整。軽く受け流せば十分です。
一方「午後3時までに返事してください。他社が来るので、そこでもう決まりますよ」といった“ラスト・チャンス”型のブラフ。焦らせることで判断を誤らせる典型的な戦術です。この手の圧力を感じたら、この相手には冷静に距離をとるべきです。
ブラフは、使う側にも高いリスクが伴う両刃の剣。相手の信用を失う危険を常にはらんでいます。だからこそ、見極める力、揺さぶられても動じない軸を持つことが、交渉における強さの根本となるのです。