1. HOME
  2. ブログ
  3. 悪意の返報性

悪意の返報性

NRIJ交渉ワンポイントでは、Q&A形式で日頃の交渉に関するご質問や悩みにお答えしています。どうぞお気軽にご相談をお寄せください!


Question

私は大手メーカーのバイヤーです。同職になったとき、上司から、「必要以上にサプライヤーに思い入れをするな」と教わりました。

Answer

交渉というと、多くの人は価格や条件の駆け引きを思い浮かべ、勝ち負けや、損得だけに照準を合わせてしまいがちです。しかし、実際のビジネス現場では、相手との信頼関係が結果を大きく左右します。その背景が、心理学でいう「好意の返報性」です。人は、自分に好意を示してくれる相手に対して、自然と好意を返したくなる傾向があります。

逆に、相手を嫌ったり敵視したりすると、その感情は相手にも伝わり、関係が悪化してしまいます。これを「悪意の返報性」と呼びます。

私が衣料品専門店の店舗開発責任者を務めていた頃の話です。ある新設ショッピングセンターの好立地への出店が内定し、社内でも大きな期待が高まっていました。ところが数日後、デベロッパーの担当者が訪ねてきて「出店の話を白紙に戻してほしい」と頭を下げたのです。理由を聞くと、親会社の意向で当社のライバル企業を優先せざるを得なくなったからとのことでした。

大きなショックを受けましたが「私もサラリーマンです。事情は理解できます」と伝え、担当者を責めることはしませんでした。それから約1か月後、その担当者から一本の電話が入りました。「キャンセル区画が出ましたので、ぜひ見に来てください」と。現地を確認すると、前回区画と遜色のない好立地でした。

もしあの時、謝りに来た相手に対して、感情に任せて相手を非難していたら、このチャンスは巡ってこなかったでしょう。担当者も人間です。誠実な対応を受けた相手には、何とか報いたいと思ってくれたのでしょう。ぜひ皆さんも「悪意の返報性」ではなく「好意の返報性」を意識した交渉を実践してみてください。